金紋秋田酒造

「日本酒の枠」を超えた唯一無二の香る樽熟成酒

日本三大花火大会で有名な秋田県・大曲に位置する「金紋秋田酒造」。

1936年に前身となる「秋田富士酒造店」からスタートし、1973年に地元の7社が資本を出し合い設立されたのが「金紋秋田酒造」です。当時は地元をメインとした普通酒の製造・販売を行なっていました。

 

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蔵の入り口

その後、1989年に佐々木孝社長が蔵を引き継ぎ現在に至ります。酒どころ・秋田の地では創業80年程度はまだ若い蔵と認識されていたこともあり、佐々木社長が蔵を引き継いだころは、地元だけで販売するのは厳しく、県外への販売を行うしか生き残る方法がない状況でした。

1992年にお酒の品質を表す旧・等級制度が廃止、現在の「特定名称酒」制度の導入されました。お酒の評価制度が変わっていく中で、蔵の方向性を模索する日々。

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佐々木社長

そんな中佐々木社長が醸造学出身ではないこともあり、「純米吟醸でマーケットを取れるのか?トップをとれるのか?」との思いと同時に、純米吟醸が高く評価されていることへの疑問も持ったと言います。

日本酒の本質を追い求め、「本質とは米が持つ旨味」との考えに気付いたとき、旨みの頂点となるべき酒は熟成酒ではないかという思いに至りました。

実は、日本酒の熟成酒に対する明確な評価基準はありません。明治に入り酒税法が改正され、お酒の醸造が終わると同時に酒税が課せられ支払いが必要になったため、蔵には熟成させる余裕がなくなりました。こうしてこの頃から熟成酒は世の中から姿を消していきました。こうした歴史的背景があり、何年間熟成させたら熟成酒として言える、などの業界全体で決まった基準がないのです。

 

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貯蔵倉庫

現在、金紋秋田酒造では、熟成期間は数年から10年以上のものまで様々。ただし、熟成酒として出すかどうかは会社判断で、4年近く熟成させたものでも熟成酒としては出してない商品もあります。

食との究極の一体感を感じる熟成酒

熟成酒を頂点とした酒造りを突き詰めると蔵の方針を決めた佐々木社長。やるなら飛び抜けて売りたい、「日本酒の枠」を超えたいと思いながら走ってきたと振り返ります。

その成果は、お酒がフレンチといった洋食にも受け入れられていることが示しています。

金紋秋田酒造の熟成酒の特徴は、白ワインの熟成酒に似ていると評価されるその味わいにあります。
特に「食に合う熟成酒」であることにこだわりを持っていて、実際海外のミシュランレストランでの取り扱いの実績もあります。

 

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Aged & Spice -Yamabuki- with western cuisine 

食に合うお酒にするために、米を磨きすぎず(精米しすぎない)、基本アルコールを多少添加するやり方で醸してます。

純米酒での熟成も試したことがあるそうですが、純米だと味が濃くなり飲みづくなったこと、品質の安定性にも課題があったため今の酒質にしていると言います。また、目指す「食に合う熟成酒」であるためには、本醸造か普通酒の方がお酒の味に少し空白のような余裕が出て、そこに食べ物が入り込むことで、食との相性が良くなるのだとか。

 

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steamed rice with the brew master

実際、熟成により旨味が引き出されているので、特にバターやソースなどの相性が抜群で、お互いを引き立たせ、かつてないほどの食とお酒の一体感を感じられます。

金紋秋田酒造の熟成酒を初めて試飲した人は、たいていこれで日本酒なの!?と驚く人がほとんどで、まだまだ熟成酒が伸びる余地はある、と期待を込めて話す佐々木社長。香り、色共に日本酒と言われないと気づかなかったとの反応が多いのだとか。

樽熟成が魅せる「香る」酒

現在、この「香り」に関しても新たな試みに取り組んでいます。熟成酒の香りは、特にアジアの人にとっては紹興酒っぽいと感じてしまうことが多いため、香りをもっと出していきたい、幅を広げたいと樽仕込みの熟成酒に取り組んでいます。

 

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使うお酒はすでに数年熟成しているもので、そこから更に樽で熟成する方法を取っています。お酒自体の味がしっかりしているので、樽で1年近く熟成しても日本酒が負けず、米の甘みもうまく残しつつ、バランスをよくしてくれるのだそうです。それだけではなく、複雑な味わいも引き出してくれるのだとか。

現在使っているのは、クラウドファンディングを行なったオーク樽、桜樽、栗樽に加え、フレンチオークやアメリカンオークにも挑戦中です。同じ樽を使って熟成しても味わいが変化することもあるそうですが、それも個性に変えて楽しんでほしいと、樽熟成による特性もプラスに変えています。

 

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桜樽熟成酒

実は熟成酒には造り手が手を加えられる部分あまりなく、そのお酒がもつポテンシャルをどこまで信じられるかが大切だと言います。今熟成酒カテゴリーの中でトップを取っている自信があるが、蔵の方針を決めたときに熟成酒を選んでいなかったら今はなかったと思うと不思議だと振り返ります。どちらかと言うと、熟成酒に使われている感覚ですよ、と笑う佐々木社長の熟成酒への探求はこれからも続いていきます。